CloverPaint雑記

CloverPaintの解説・開発状況・内部仕様・利用法などについてつらつらと

ブラシ作成指南(その2) ~ブラシ設定概観2

さて、前回はブラシパラメータのうち、Spotの形状や濃度に関わるパラメータを概観して来ました。

今回はその続きとなります。

Spotの位置や回転を制御するパラメータ 

・中心移動

・中心回転

・軸合わせ

・Spot動的回転

 

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これらパラメータを設定することで、Spotの形状はそのままに、ペン先からの位置の移動や回転をさせることができます。通常Spotの中心はペン先の真下にありますが、中心移動でSpotの下端をペン先にまで移動させることが可能です。これは筆などをイメージしたものです。

中心回転を使えばSpotを中心位置ごと、ペン先を軸に回転させることができます。変形で細長くしたブラシを回転させることで平筆を斜めに切った片羽ブラシのような表現になります。(画像を参照)

軸合わせパラメータは、端末の回転や、Cintiqではスタイラスを傾けた方向で中心回転をどのように補正するか指定します。

これらのパラメータと、傾き入力による動的パラメータ設定を組み合わせて、太さ・変形等を適切に設定すれば、スタイラスを立てた時は尖った、寝かせた時は帯状になるといったリアルな鉛筆を実現することも容易に可能です。(ただし傾き入力ができるのは現状Cintiq Companion Hybridのみ)

Spot動的回転を使うと、ストロークの進行方向に合わせ、Spot中心を軸にSpotを回転させることができます。やわらかく回転する筆先等を表現したいときに使います。

 

ストロークの濃度演算に関わるパラメータ

・Spot間隔

・濃度演算

・ストローク合成

 

ストロークの濃度演算に関する動作は非常に複雑です。

完全に理解するためにはブラシシステムが持っている、内部ピクセルバッファの構成と、それらの演算動作を知る必要があります。

ここでは、濃度演算とはSpotがストローク上で重なり合う時に、それらSpot間でどのような演算が行われるかの設定だと考えておいてください。

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(間隔倍率に5.0を指定しているのでSpot同士が半分オーバーラップしている)

Spot間隔はどの程度の間隔でSpotをストローク上に敷き詰めるか指定します。小さければ小さいほど密になりますが、その分パフォーマンスに問題が出ます。標準設定では10でペンの太さとSpot間隔が一致して、見た目数珠つなぎのようになります。

濃度演算の設定にもよりますが、Spot間隔が狭いほどSpot同士が重なりあう部分が多くなるため、流量でSpotを薄くしていても、結果として得られるストロークは濃くなります。流量補正をチェックすると、Spot間隔やその他パラメータを考慮して、流量の設定とストロークの見た目の濃さが比例するよう内部的に流量の値を補正するようになります。

ストローク合成はこれら演算が終わった後のストローク情報がキャンバスに適用されるときに使われる合成パラメータを指定します。ここはレイヤーの合成モード設定と同じです。ストロークが開始される毎に特別な透明レイヤーが指定した合成モードで作成され、ストロークが終わったら自動的に統合されると考えても問題ありません。

 

その他特殊なパラメータ

・ジッター

パラメータの右端にあるボタンから行える動的パラメータ設定は、筆圧など外部からの入力や状態の変化による効果を設定するものでしたが、こちらはパラメータに対して外部から何の入力もなくても継続的にかかる効果を設定します。いわゆるノイズです。

Spot単位ジッターはストローク描画中にSpot毎にランダムな値を適用します。線の太さを変えて凸凹させるなどの効果を与えることができます。

Stroke単位ジッターはストローク描画の開始時に一回だけランダムな値を適用します。線の色がストローク毎に微妙に異なるなどの効果を与えることができます。

Spot単位ジッターでは完全ランダムなホワイトノイズの他に、サインカーブやパーリンノイズを利用して、ある程度規則的な変化を与えることもできます。パーリンノイズとは一時期流行った1/fゆらぎのようなもので、自然界によくみられる揺れをシミュレートしたノイズです。

 

・縁取り

濃度演算の結果に応じて濃い部分を描画色、薄い部分を背景色にすることで縁取りします。

 

・色変化

ここで設定された値で、描画色と背景色の間を線形補間してブラシの色にします。

 

・テクスチャパターン

通常ブラシのSpotは描画色で全体が塗りつぶされ、Spotの形状・濃度でマスクされるわけですが、ここでテクスチャパターンを指定するとピクセル毎に違う色を適用することができます。

 

・破線タイプ

ストローク上の進行度合いで規則的にSpotの描画をON/OFFすることで破線にします。

 

 

これで全パラメータの概観が終わりました。

個別に詳しく見ていくと非常に難しい設定もあるのですが、それぞれのパラメータの役目はハッキリと分かれていて、設定できるパラメータの数が多いからと言って、必ずしも難しいわけではありません。